東郷寺は、日露戦争で連合艦隊司令長官として活躍した東郷平八郎の別荘跡に建立された、久遠寺を総本山とする日蓮宗の寺院です。
東郷元帥の死後、昭和14年に元帥を慕う旧日本海軍関係者が中心となって建立されました。
山門前に府中市の名木100選の大きなしだれ桜が5本植えられています。
見頃はソメイヨシノよりも早く3月下旬頃。いずれも花付きが良く幹も綺麗で樹齢は若いと思われます。
しだれ桜は日蓮宗の総本山である身延山久遠寺から苗を移植したもので、向かって右手前の1本が特に目を引きます。(下の写真)
左側に植えられているしだれ桜は若干開花が遅いようです。
身延山 久遠寺のしだれ桜
『東郷寺の枝垂れ桜は、彼我の差別のない英霊供養を願い建立された当山のために、総本山見延山延暦寺久遠寺境内より苗を移植したものです。
世界の平和を渇望しながら、遠い異国の地に散った若き無名兵士達の御魂が、美しい花となって咲き誇ります。東郷寺世話人』
現地開設版
東郷寺の山門
しだれ桜の先にある大きくて立派な山門は1940年(昭和15年)建立で、設計者は著名な建築家・建築史家の伊東忠太(作品:明治神宮、上杉神社社殿、築地本願寺など多数)。
黒澤明監督の映画『羅生門』に登場する門のモデルになったといわれています。映画に登場する羅生門は二階建てですが、二階部分を取り除けば屋根の形状から石段の様子まで、東郷寺山門と瓜二つということです。
山門は総けやきで通常の物に比べて規模が大きく、府中崖線の段丘を利用して造られており、手前に急な階段があります。階段が恐い方は向かって左側にある坂を登りましょう。
この山門は2010年度の東京都選定歴史的建造物に指定されています。
山門の奥や上から眺めるしだれ桜も素晴らしいですが、この位置から撮影する場合、午前中は逆光になります。
桜の周囲には遊歩道が整備されているので様々な角度から鑑賞する事ができます。
山門へ続く参道に覆い被さる様に咲く姿は壮観。
桜の季節には多くの見物客で賑わいますが、東京でもこのような景色を楽しむ事ができるのは嬉しいですね。
東郷寺のしだれ桜へのアクセス
京王線多磨霊園駅の南口を出て目の前にある東郷寺通りを右(南)に歩いて行きます。ゆるい下り坂を5分程歩いていると桜が見えてくるので迷う事はないと思います。
一般者向けの駐車場はありませんので多磨霊園駅付近のコインパーキングに駐車する事になります。
ちなみに多磨霊園駅の駅舎は東郷寺の山門をイメージさせるデザインになっているそうです。
かなしい坂
東郷寺の北側に「かなしい坂」と名付けられた細い坂道があります。
江戸時代に行われた玉川上水の工事の際、当初の予定では多磨霊園駅付近を通す予定でしたが、導水した水がこの坂あたりで地面に染み込んでしまい、工事は失敗に終わってしまったとされています。そのため玉川上水はコースを北へ移す事となりました。
工事の失敗の責任を問われて処刑された役人たちが「かなしい」と嘆いたことから、「かなしい坂」の名が付いたといわれています。このときの堀は、今でも「むだ掘り」「空堀」「新堀」の名で残っています。
なんとも切ない話ですね。