後水尾天皇が京の寺で花見を終えた帰路、花の余りの美しさに牛車を引き返して再びご覧になったことから、御車(みくるま)返しの桜と呼ばれています。
一枝の中に一重と八重(花弁6〜7枚程度)の花があるのが特徴で、八重一重とも呼ばれています。花びらは大きく、しわがあり濃いピンク色をしています。
「御車返し」と呼ばれている桜は全国に幾つかあり、代表的な物として、下記が挙げられます。
・常照皇寺の御車返しの桜
・京都御苑の宜秋門前の御車返しの桜
・京都清水寺の地主神社の地主桜(じしゅざくら)
・鎌倉の極楽寺「八重一重咲分桜」
上記の桜が全て同じ種類の物かは不明ですが、花や幹の色が違う物もあり一重と八重が咲く桜は複数の種類があるのかもしれません。
いずれの「御車返しの桜」にも嵯峨天皇、御水尾天皇、公家などが車を引き返して咲く花を眺めたという伝承があるのも興味深いですね。
栽培品種名は「御車返」で、多摩森林科学園によると、ヤマザクラとオオシマザクラが交配して産まれたもので、鎌倉桐ヶ谷にあったことから「桐ヶ谷」とも呼ばれているとの事です。
確かに花と一緒に葉っぱも出ているようです。
上野の輪王寺にある御車返しの桜は幹が太く樹勢も旺盛、華やかな桜です。
桜の前には「寝釈迦石」というお釈迦様が寝転んだ姿に見える石もあります。
桜の木の下でお昼寝でしょうか。
輪王寺は天台宗の寺院で、良源(慈恵大師)と天海(慈眼大師)という2人の高僧を祀る開山堂があることから、一般には両大師と呼ばれています。
また、輪王寺(両大師)の歴史を辿ると後水尾天皇第3皇子の守澄法親王が深く関わっていることから、「御車返し」が植えられたのでしょうか。
さらに興味深い事に、天海(慈眼大師)は天文5年(1536年)に福島県会津高田に生まれたとされていますが、この高田にある伊佐須美神社の薄墨桜(会津五桜)も八重に一重が交わる珍しい桜なのです。
(天海の出生地については諸説ありますが、両親の墓がこの地で発見されました。)
「御車返し」に関わる人物の足跡を辿ると、そこには八重一重の桜が存在する、偶然かどうかは分かりませんが、何か感慨深いものを感じますね。
撮影日:2013.3.29
上野両大師 御車返しの桜 - DATA |
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【種 類】 | ミクルマガエシ - 樹齢不明 | |
【住 所】 | 東京都台東区上野公園14-5 | |
【交 通】 | 電車 | JR上野駅公園口下車 - 徒歩8分 |
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